経営管理

小規模企業に社労士顧問は必要か?導入すべき企業・不要な企業の判断基準を実務視点で解説

こんにちは、経営人事ジャーナル執筆者、経営人事社会保険労務士事務所の代表社員のKJです。

私はこれまで、従業員数数千名規模の企業において、管理部門の実務に長年従事してきました。

その経験の中で、小規模企業から大規模企業まで、労務管理体制の違いが企業の安定性に大きく影響する現場を数多く見てきました。

 

今回は、「小規模企業に社労士顧問は本当に必要なのか?」というテーマについて、実務視点から解説していきたいと思います。

まず、従業員を雇用し、事業を継続していく中で、

  • 社会保険の手続
  • 給与計算
  • 労務管理
  • 労働法令への対応

といった「労務管理」は避けて通れない業務です。

その中で、「小規模企業に社労士顧問は本当に必要なのか?」と疑問を持たれる経営者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、小規模企業の実務を踏まえ、

  • 社労士顧問が必要な企業
  • 社労士顧問が不要な企業の特徴
  • 社労士顧問を導入するメリット

について、実務視点で解説していきたいと思います。

社労士顧問はすべての小規模企業に必須ではない

まず結論から申し上げると、社労士顧問は、すべての小規模企業に必要というわけではありません。

実際に、私自身も「この段階ではまだ社労士顧問は不要です」とお伝えすることもあります。

 

しかし、従業員を雇用している企業においては、適切なタイミングで社労士顧問を導入することが、将来的な労務リスクの低減と組織の安定性向上に大きく寄与するケースが多いのが実務上の実態です。

重要なのは「自社の状況に社労士顧問が適しているか?」また、「社労士顧問が“今”必要なのか?」を正しく判断することです。

本記事では、小規模企業の実務を踏まえ、「社労士顧問が必要になる具体的なタイミング」についても解説します。

 

社労士顧問は、「必ず導入すべき」とは言い切れませんが、実務の現場においては、従業員を雇用した段階で導入を検討する企業が多いのが実態であり、実務上も一つの重要な判断ポイントになります。

社労士顧問が必要な企業の特徴

以下のいずれかに該当する場合、社労士顧問の導入は有効だと思われます。

① 従業員を雇用している(または今後雇用予定)

従業員を雇用すると、以下の手続が必要になります。

  • 社会保険の加入手続
  • 労働保険の手続
  • 雇用契約書の整備
  • 給与計算
  • 労働時間管理

これらを誤ると、

  • 未加入による遡及徴収
  • 行政指導
  • 労務トラブル

といったリスクが発生します。

制度やシステムが未整備の状態でトラブルが発生すると、多くの時間、労力、お金を使うことになります。

未然に防止できる制度やシステムを構築しておいた方が、結果として労力費用共に軽傷で済むことが多いです。

② 給与計算を経営者または事務担当者が行っている

給与計算は単なる計算作業ではなく、以下の知識が必要になります。

  • 社会保険料
  • 所得税
  • 残業代計算
  • 法改正対応

計算ミスや法令違反が発生、発覚すると、

  • 従業員との信頼関係の低下
  • 追加支払い
  • 修正対応

などの金銭的な負担と時間的な負担が生じます。

給与は、従業員にとって最も関心の高い事項の一つであり、一度信頼を損なうと、その回復には想像以上の時間を要します。

実務の現場においても、給与に関する問題は、金額の大小に関わらず、組織の安定性に影響する重要な論点となります。

最近はSaaSの発展により、便利な給与計算システムを安価に、そして簡単に利用できるようになりましたが、計算の背景となる法律知識が不足していることによってミスや労務トラブルが発生することが珍しくありません。

③ 労務について相談できる専門家がいない

例えば、

  • 従業員とのトラブル対応
  • 就業規則の整備
  • 問題社員への対応

などは、誤った対応をすると高確率で法的リスクが生じます。

また、一度問題になってしまうと、相当の期間、相当の金銭を無駄にしてしまうとても重大なリスクとなります。

社労士の顧問がいることで、大きな問題になる前に適切な対応を検討することができます。

④ 本業に集中したいと考えている

労務管理は、経営者の時間を想像以上に消費します。

労務管理業務を社労士顧問として外部委託することで、

  • 営業活動
  • 経営計画の策定
  • 商品開発
  • 経営判断

といった経営者の本来の業務に集中できます。

経営者の時間は限られているため、労務管理を外部専門家である社労士顧問に委託することで、本業への集中度を高めることが可能となります。

社労士顧問が不要な企業の特徴

一方で、以下の場合は必須ではありません。

① 従業員がいない(役員のみ)

役員のみの会社では、労務管理業務は限定的です。

この段階では、スポット相談で十分な場合もあります。

② 社内に十分な知識と体制がある

労務管理に詳しい専門職員がおり、以下が整備されている場合

  • 給与計算体制
  • 社会保険手続体制
  • 労務知識(法令対応が自社のみでできる)

こういった企業は社内で対応可能ですが、小規模企業では稀です。

労働関連法は頻繁な改正が繰り返され、社会保険労務士などの専門家は常に情報をアップデートしなければなりませんが、一般社員が情報のアップデートに費やせる時間も対応する時間も限られているからです。

小規模企業ではそういった対応に従業員を動員するよりも、常に情報のアップデートを行っている社会保険労務士などの専門家に任せてしまった方が効率的である事の方が多いです。

社労士顧問を導入するメリット

主なメリットは以下です。

  • 労務リスクの低減
    法令違反や手続漏れを防止できます。
    顧問企業に対して定期的な情報提供を行っている社労士も多く、社内の労務法令知識の蓄積にも役に立つことが多いです。
    どこまで関与するかは社労士顧問契約の内容にもよりますので、契約内容をしっかり説明してくれる社労士に顧問を依頼するべきです。
  • 経営者の時間の確保
    労務業務から解放されます。
    経営者が給与計算や労務手続きを行っている小規模企業、または直接は行っていないが最終的な確認作業や手続きや計算のミスが多く対応に多くの時間を費やしている経営者の方が多いのも事実です。
    こちらもどこまで業務に関与するかは社労士顧問の契約内容によりますが、自社にとって適切な業務を代行してくれる社労士顧問を採用することで、経営者が労務管理業務に使っていた時間を自社の経営活動にフルに使えるようになります。
  • 継続的な相談が可能
    問題発生前に対応することができます。
    日々業務をこなしていると、小さな問題や、わからない事が出てくると思います。そんな時に気軽に相談できる社労士が顧問についているとトラブルの芽を早めに摘み取れる可能性が高いので安心です。
    会社の制度やシステム、企業風土は本当にそれぞれなので、企業にとっては小さな問題と思える事情や疑問でも、背景がわからない社労士には適切なアドバイスをすることができません。
    その点、社労士顧問にいつでも相談できる体制が整っていれば自社の事情やシステム、制度や企業風土について一から詳しく説明する手間も省ける(自社の状況を理解している)というのも実は大きなポイントになります。
  • 労務体制の整備
    組織の成長に対応した管理体制を構築できます。
    組織を大きくする際には制度構築、システム構築が必要になることが多いです。こういった構築を後回しにして組織を拡大していくと必ず問題が発生します。
    社労士のスキルにも依存しますが、自社が目指す規模に合った適切な制度構築、システム構築など、労務体制の整備を相談できる社労士が顧問としてついていることは組織の成長にも大きく貢献することになります。

小規模企業こそ社労士顧問の効果は大きい

小規模企業では、労務専任担当者がいない場合が多く、経営者自身が対応しているケースが一般的です。

経営者は基本的に忙しい為、労務管理に時間を割くと本来の業務に集中できないといった状況に陥りがちです。

本業を優先したいのであれば、労務管理や給与計算、社会保険手続きや労働保険手続きはできるだけ効率化して社会保険労務士などの専門家にまかせるといった選択が最適解です。

小規模企業ほど、経営者がこういった労務管理業務に忙殺されているケースがありますので、社労士顧問を採用することによる効果は大きくなります。

特に、従業員数が1名から10名程度の小規模企業では、労務専任担当者を置くことが難しく、社労士顧問の活用による効果は大きくなります。

労務問題は、「何かが起きてから対応する」よりも、「何も起きていない段階で整備する」方が、圧倒的に低コストで済みます。

実務の現場では、この差が企業の安定性に大きく影響します。

社労士顧問が必要かどうかの判断基準(実務視点)

以下のいずれかに該当する場合、社労士顧問の導入を検討する段階にあると考えられます。

  • 従業員を1名以上雇用している
  • 給与計算や社会保険手続に不安がある
  • 労務について相談できる専門家がいない
  • 労務対応に経営者の時間を取られている
  • 将来的に従業員の増加を予定している

逆に、以下の場合は、現時点では必須とは言えません。

  • 従業員がいない
  • 労務管理体制が十分に整備されている

重要なのは、「問題が発生してから導入する」のではなく、「問題が発生する前に体制を整備する」という視点です。

状況社労士顧問の必要性
従業員がいない不要(スポット相談で十分)
従業員1〜5名検討推奨
従業員5〜10名導入推奨
従業員10名以上導入が望ましい
労務担当者がいない導入推奨
労務担当者がいるが専門知識不足導入推奨
専門人材が社内にいる必須ではない

まとめ

社労士顧問が必要な企業

  • 従業員を雇用している
  • 給与計算を自社で行っている
  • 労務相談先がない
  • 本業に集中したい

社労士顧問が不要な企業

  • 従業員がいない
  • 社内体制が十分整備されている

社労士顧問は、単なる手続代行ではなく、企業の労務体制を安定させるための支援です。

また、労務管理は単なる手続やリスク管理だけではなく、組織の安定性と成長性に直接影響する重要管理領域です。

小規模企業の段階で適切な体制を整備しておくことは、将来の組織拡大を見据えた基盤整備にもつながります。

社労士顧問の導入は、単なるコストではなく、企業の安定性と将来の成長を支えるための「管理投資」です。

実務の現場では、労務体制が整備されている企業ほど、組織運営が安定し、経営者が本来の業務に集中できている傾向があります。

自社の状況を踏まえ、適切なタイミングで専門家の活用を検討することが、安定した組織運営への重要な一歩となります。

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